るづけ》にした膃肭臍《おっとせい》を三頭。縦に、横に、仰向けに、胴油紙《とうゆがみ》の上に乗せた。
 正面《まむき》の肋《あばら》のあたりを、庖丁《ほうちょう》の背でびたびたと叩いて、
「世間ではですわ、めっとせいはあるが、膃肭臍は無い、と云うたりするものがあるですが、めっとせいにも膃肭臍にも、ほんとのもんは少いですが。」
 無骨な口で、
「船に乗っとるもんでもが……現在、膃肭臍を漁《と》った処で、それが膃肭臍、めっとせいという区別は着かんもんで。
 世間で云うめっとせいというから雌でしょう、勿論、雌もあれば、雄もあるですが。
 どれが雌だか、雄だか、黒人《くろうと》にも分らんで、ただこの前歯を、」
 と云って推重《おしかさ》なった中から、ぐいと、犬の顔のような真黒《まっくろ》なのを擡《もた》げると、陰干の臭《におい》が芬《ぷん》として、内へ反った、しゃくんだような、霜柱のごとき長い歯を、あぐりと剥《む》く。
「この前歯の処ウを、上下《うえした》噛合《かみあ》わせて、一寸の隙《すき》も無いのウを、雄や、(と云うのが北国《ほっこく》辺のものらしい)と云うですが、一分一寸ですから、開《あ》
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