いて、灰を吹きつつ、
「無駄だねえ。」
と清《すずし》い声、冷《ひやや》かなものであった。
「弘法大師御夢想のお灸《きゅう》であすソ、利きますソ。」
と寝惚《ねぼ》けたように云うと斉《ひと》しく、これも嫁入を恍惚《うっとり》視《なが》めて、あたかもその前に立合わせた、つい居廻りで湯帰りらしい、島田の乱れた、濡手拭《ぬれてぬぐい》を下げた娘《しんぞ》の裾《すそ》へ、やにわに一束の線香を押着《おッつ》けたのは、あるが中にも、幻のような坊様で。
つくねんとして、一人、影法師のように、びょろりとした黒紬《くろつむぎ》の間伸びた被布《ひふ》を着て、白髪《しらが》の毛入道に、ぐたりとした真綿の帽子。扁平《ひらった》く、薄く、しかも大ぶりな耳へ垂らして、環珠数《わじゅず》を掛けた、鼻の長い、頤《おとがい》のこけた、小鼻と目が窪んで、飛出した形の八の字眉。大きな口の下唇を反らして、かッくりと抜衣紋《ぬきえもん》。長々と力なげに手を伸ばして、かじかんだ膝を抱えていたのが、フト思出した途端に、居合わせた娘の姿を、男とも女とも弁別《わさま》える隙《ひま》なく、馴《な》れてぐんなりと手の伸びるままに、細
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