女であろう。
黒小袖の肩を円く、但し引緊《ひきし》めるばかり両袖で胸を抱いた、真白《まっしろ》な襟を長く、のめるように俯向《うつむ》いて、今時は珍らしい、朱鷺色《ときいろ》の角隠《つのかくし》に花笄《はなこうがい》、櫛《くし》ばかりでも頭《つむり》は重そう。ちらりと紅《くれない》の透《とお》る、白襟を襲《かさ》ねた端に、一筋キラキラと時計の黄金鎖《きんぐさり》が輝いた。
上が身を堅く花嫁の重いほど、乗せた車夫は始末のならぬ容体《ようだい》なり。妙な処へ楫《かじ》を極《き》めて、曳据《ひきす》えるのが、がくりとなって、ぐるぐると磨骨《みがきぼね》の波を打つ。
十
露店の目は、言合わせたように、きょときょとと夢に辿《たど》る、この桃の下路《したみち》を行《ゆ》くような行列に集まった。
婦《おんな》もちょいと振向いて、(大道|商人《あきんど》は、いずれも、電車を背後《うしろ》にしている)蓬莱《ほうらい》を額に飾った、その石のような姿を見たが、衝《つ》と向《むき》をかえて、そこへ出した懐炉《かいろ》に手を触って、上手に、片手でカチンと開けて、熟《じっ》と俯向《うつむ》
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