薬を用いて、立合《たちあい》の口中黄色い歯から拭取《ふきと》った口塩《くちしお》から、たちどころに、黴菌《ばいきん》を躍らして見せるどころの比ではない。
 よく売れるから、益々《ますます》得意で、澄まし返って説明する。
 が、夜がやや深く、人影の薄くなったこうした時が、技師大得意の節で。今まで嚔《くしゃみ》を堪《こら》えたように、むずむずと身震いを一つすると、固くなっていた卓子《テエブル》の前から、早くもがらりと体《たい》を砕いて、飛上るように衝《つ》と腰を軽く、突然《いきなり》ひょいと隣のおでん屋へ入って、煮込を一串《ひとくし》引攫《ひっさら》う。
 こいつを、フッフッと吹きながら、すぺりと古道具屋の天窓《あたま》を撫《な》でるかと思うと、次へ飛んで、あの涅槃《ねはん》に入ったような、風除葛籠《かざよけつづら》をぐらぐら揺《ゆす》ぶる。

       八

 その時きゃっきゃっと高笑《たかわらい》、靴をぱかぱかと傍《わき》へ外《そ》れて、どの店と見当を着けるでも無く、脊を屈《かが》めて蹲《うずくま》った婆さんの背後《うしろ》へちょいと踞《しゃが》んで、
「寒いですね。」
 と声を掛
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