、煙草《たばこ》の脂留《やにどめ》、新発明|螺旋仕懸《らせんじかけ》ニッケル製の、巻莨《まきたばこ》の吸口を売る、気軽な人物。
自から称して技師と云う。
で、衆を立たせて、使用法を弁ずる時は、こんな軽々しい態度のものではない。
下目づかいに、晃々《きらきら》と眼鏡を光らせ、額で睨《にら》んで、帽子を目深《まぶか》に、さも歴々が忍びの体《てい》。冷々然として落着き澄まして、咳《しわぶき》さえ高うはせず、そのニコチンの害を説いて、一吸《ひとすい》の巻莨から生ずる多量の沈澱物をもって混濁した、恐るべき液体をアセチリンの蒼光《あおびかり》に翳《かざ》して、屹《き》と試験管を示す時のごときは、何某《なにがし》の教授が理化学の講座へ立揚《たちあが》ったごとく、風采《ふうさい》四辺《あたり》を払う。
そこで、公衆は、ただ僅《わずか》に硝子《がらす》の管へ煙草を吹込んで、びくびくと遣《や》ると水が濁るばかりだけれども、技師の態度と、その口上のぱきぱきとするのに、ニコチンの毒の恐るべきを知って、戦慄《せんりつ》に及んで、五割引が盛《さかん》に売れる。
なかなかどうして、歯科散《しかさん》が試験
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