へ、ぬっと、鼠の中折《なかおれ》を目深《まぶか》に、領首《えりくび》を覗《のぞ》いて、橙色《だいだいいろ》の背広を着、小造りなのが立ったと思うと、
「大福餅、暖《あったか》い!」
 また疳走《かんばし》った声の下、ちょいと蹲《しゃが》む、と疾《はや》い事、筒服《ずぼん》の膝をとんと揃えて、横から当って、婦《おんな》の前垂《まえだれ》に附着《くッつ》くや否や、両方の衣兜《かくし》へ両手を突込《つっこ》んで、四角い肩して、一ふり、ぐいと首を振ると、ぴんと反らした鼻の下の髯《ひげ》とともに、砂除《すなよ》けの素通し、ちょんぼりした可愛い目をくるりと遣《や》ったが、ひょんな顔。
 ……というものは、その、
「……暖《あったか》い!……」を機会《きっかけ》に、行火《あんか》の箱火鉢の蒲団《ふとん》の下へ、潜込《もぐりこ》ましたと早合点《はやがってん》の膝小僧が、すぽりと気が抜けて、二ツ、ちょこなんと揃って、灯《ともしび》に照れたからである。
 橙背広のこの紳士は、通り掛《がか》りの一杯機嫌の素見客《ぞめき》でも何でもない。冷かし数の子の数には漏れず、格子から降るという長い煙草《きせる》に縁のある
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