りと乗せたのを、その俯目《ふしめ》に、ト狙《ねら》いながら、件《くだん》の吹矢筒で、フッ。
 カタリといって、発奮《はずみ》もなく引《ひっ》くりかえって、軽く転がる。その次のをフッ、カタリと飜《かえ》る。続いてフッ、カタリと下へ。フッフッ、カタカタカタと毛を吹くばかりの呼吸《いき》づかいに連れて、五つ七つたちどころに、パッパッと石鹸玉《シャボンだま》が消えるように、上手にでんぐり、くるりと落ちる。
 落ちると、片端から一ツ一ツ、順々にまた並べて、初手《しょて》からフッと吹いて、カタリといわせる。……同じ事を、絶えず休まずに繰返して、この玩弄物《おもちゃ》を売るのであるが、玉章《ふみ》もなし口上もなしで、ツンとしたように黙っているので。
 霧の中に笑《わらい》の虹《にじ》が、溌《ぱっ》と渡った時も、独り莞爾《にっこり》ともせず、傍目《わきめ》も触《ふ》らず、同じようにフッと吹く。
 カタリと転がる。
「大福、大福、大福かい。」
 とちと粘って訛《なまり》のある、ギリギリと勘走った高い声で、亀裂《ひび》を入《い》らせるように霧の中をちょこちょこ走りで、玩弄物屋の婦《おんな》の背後《うしろ》
前へ 次へ
全45ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング