》が、今度は堪《たま》らなそうに、凍《かじか》んだ両手をぶるぶると唇へ押当てて、貧乏揺《びんぼうゆる》ぎを忙《せわ》しくしながら、
「あ、あ、」
とまた大欠伸《おおあくび》をして、むらむらと白い息を吹出すと、筒抜けた大声で、
「大福が食いてえなッ。」
六
「大福餅が食べたいとさ、は、は、は、」
と直きその傍《そば》に店を出した、二分心《にぶしん》の下で手許《てもと》暗く、小楊枝《こようじ》を削っていた、人柄なだけ、可憐《いとし》らしい女隠居が、黒い頭巾《ずきん》の中から、隣を振向いて、掠《かす》れ掠れ笑って言う。
その隣の露店は、京染|正紺請合《しょうこんうけあい》とある足袋の裏を白く飜《かえ》して、ほしほしと並べた三十ぐらいの女房《にょうぼ》で、中がちょいと隔っただけ、三徳用の言った事が大道でぼやけて分らず……但し吃驚《びっくり》するほどの大音であったので、耳を立てて聞合わせたものであった。
会得《えとく》が行《ゆ》くとさも無い事だけ、おかしくなったものらしい。
「大福を……ほほほ、」と笑う。
とその隣が古本屋で、行火《あんか》の上へ、髯《ひげ》の伸びた痩
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