《おっか》けた亭主が、値が出来ないで舌打をして引返す……煙草入《たばこいれ》に引懸《ひっかか》っただぼ鯊《はぜ》を、鳥の毛の采配《さいはい》で釣ろうと構えて、ストンと外した玉屋の爺様《じいさま》が、餌箱《えさばこ》を検《しら》べる体《てい》に、財布を覗《のぞ》いて鬱《ふさ》ぎ込む、歯磨屋《はみがきや》の卓子《テエブル》の上に、お試用《ためし》に掬出《すくいだ》した粉が白く散って、売るものの鰌髯《どじょうひげ》にも薄《うっす》り霜を置く――初夜過ぎになると、その一時《ひととき》々々、大道店の灯筋《あかりすじ》を、霧で押伏《おっぷ》せらるる間が次第に間近になって、盛返す景気がその毎《たび》に、遅く重っくるしくなって来る。
ずらりと見渡した皆がしょんぼりする。
勿論、電燈の前、瓦斯の背後《うしろ》のも、寝る前の起居《たちい》が忙《せわ》しい。
分けても、真白《まっしろ》な油紙《あぶらっかみ》の上へ、見た目も寒い、千六本を心太《ところてん》のように引散《ひっち》らして、ずぶ濡《ぬれ》の露が、途切れ途切れにぽたぽたと足を打って、溝縁《みぞぶち》に凍りついた大根剥《だいこんむき》の忰《せがれ
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