》の青い色、風呂敷の黄色いの、寂《さみ》しい媼《ばあ》さんの鼠色まで、フト判然《はっきり》と凄《すご》い星の下に、漆のような夜の中に、淡い彩《いろどり》して顕れると、商人連《あきゅうどれん》はワヤワヤと動き出して、牛鍋《ぎゅうなべ》の唐紅《とうべに》も、飜然《ひらり》と揺《ゆら》ぎ、おでん屋の屋台もかッと気競《きおい》が出て、白気《はくき》濃《こま》やかに狼煙《のろし》を揚げる。翼の鈍《のろ》い、大きな蝙蝠《こうもり》のように地摺《じずり》に飛んで所を定めぬ、煎豆屋《いりまめや》の荷に、糸のような火花が走って、
「豆や、煎豆、煎立豆や、柔い豆や。」
 と高らかに冴《さ》えて、思いもつかぬ遠くの辻のあたりに聞える。
 また一時《ひとしきり》、がやがやと口上があちこちにはじまるのである。
 が、次第に引潮が早くなって、――やっと柵《しがらみ》にかかった海草のように、土方の手に引摺《ひきず》られた古股引《ふるももひき》を、はずすまじとて、媼《ばあ》さんが曲った腰をむずむずと動かして、溝の上へ膝を摺出《ずりだ》す、その効《かい》なく……博多の帯を引掴《ひッつか》みながら、素見《ひやかし》を追懸
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