。」
などと敬意を表する。
商売|冥利《みょうり》、渡世《くちすぎ》は出来るもの、商《あきない》はするもので、五布《いつの》ばかりの鬱金《うこん》の風呂敷一枚の店に、襦袢《じゅばん》の数々。赤坂だったら奴《やっこ》の肌脱《はなぬぎ》、四谷じゃ六方を蹈《ふ》みそうな、けばけばしい胴、派手な袖。男もので手さえ通せばそこから着て行《ゆ》かれるまでにして、正札が品により、二分から三両|内外《うちそと》まで、膝の周囲《まわり》にばらりと捌《さば》いて、主人《あるじ》はと見れば、上下縞《うえしたしま》に折目あり。独鈷入《とっこいり》の博多《はかた》の帯に銀鎖を捲《ま》いて、きちんと構えた前垂掛《まえだれがけ》。膝で豆算盤《まめそろばん》五寸ぐらいなのを、ぱちぱちと鳴らしながら、結立《ゆいた》ての大円髷《おおまるまげ》、水の垂りそうな、赤い手絡《てがら》の、容色《きりょう》もまんざらでない女房を引附けているのがある。
時節もので、めりやすの襯衣《しゃつ》、めちゃめちゃの大安売、ふらんねる切地《きれじ》の見切物、浜から輸出品の羽二重《はぶたえ》の手巾《ハンケチ》、棄直段《すてねだん》というのもあ
前へ
次へ
全45ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング