―雨交りに、電光の青き中を、朱鷺色《ときいろ》が八重に縫う乙女椿の花一輪。はたと幕に当って崩れもせず……お稲の玉なす胸に留まって、たちまち隠れた。
美しい女《ひと》は筵《むしろ》に爪立《つまだ》って身悶《みもだ》えしつつ、
「お稲さんは、お稲さんは、これからどうなるんです、どうなるんです。」
「むむ、くどいの、あとは魔界のものじゃ。雪女となっての、三つ目入道、大入道の、酌なと伽《とぎ》なとしょうぞいの。わはは、」
と笑った。
美しい女《ひと》は、額を当てて、幕を掴《つか》んで、
「生意気な事をお言いでない。幕の中の人、悪魔、私も女だよ、十九だよ……お稲さんと同じ死骸になるんだけれど、誰が、誰が、酌なんか、……可哀相にお稲さんを――女はね、女はね、そんな弱いものじゃない。私を御覧。」
はたた、はたた神。
南無三宝《なむさんぽう》、電光に幕あるのみ。
「あれえ。」と聞えた。
瞬間、松崎は猶予《ためら》ったが、棄ておかれぬのは、続いて、編笠した烏と古女房が、衝《つ》と幕を揚げて追込んだ事である。
手を掛けると、触るものなく、篠《しの》つく雨の簾《すだれ》が落ちた。
と見ると、
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