陽炎座
泉鏡花
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)帽子《あたま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一枚|小袖《こそで》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「彳+淌のつくり」、第3水準1−84−33]※[#「彳+羊」、第3水準1−84−32]《さまよう》
−−
一
「ここだ、この音なんだよ。」
帽子《あたま》も靴も艶々《てらてら》と光る、三十ばかりの、しかるべき会社か銀行で当時若手の利《き》けものといった風采《ふう》。一ツ、容子《ようす》は似つかわしく外国語で行こう、ヤングゼントルマンというのが、その同伴《つれ》の、――すらりとして派手に鮮麗《あざやか》な中に、扱帯《しごき》の結んだ端、羽織の裏、褄《つま》はずれ、目立たないで、ちらちらと春風にちらめく処々《ところどころ》に薄《うっす》りと蔭がさす、何か、もの思《おもい》か、悩《なやみ》が身にありそうな、ぱっと咲いて浅く重《かさな》る花片《はなびら》に、曇《く
次へ
全88ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング