も指が揺《ゆら》いで、
「そして、それからはえ?」
と屹《きっ》と言う
「此方《こなた》、親があらば叱らさりょう。よう、それからと聞きたがるの、根問《ねど》いをするのは、愛嬌《あいきょう》が無うてようないぞ。女子《おなご》は分けて、うら問い葉問《はどい》をせぬものじゃ。」
雲の暗さが増すと、あたりに黒く艶が映《さ》す。
その中に、美しい女《ひと》は、声も白いまで際立って、
「いいえ、聞きたい。」
二十三
「たって聞きたくばの、こうさしゃれ。」
幕の蔭で、間《ま》を置いて、落着いて、
「お稲の芝居は死骸の黒髪の長いまでじゃ。ここでは知らぬによって、後は去《い》んで、二度|添《ぞい》どのに聞かっしゃれ、二度添いの女子《おなご》に聞かっしゃれ。」
「二度添とは? 何です、二度添とは。」
扱帯《しごき》を手繰るように繰返して問返した。
「か、知らぬか、のう。二度添とはの、二度目の妻の事じゃ。男に取替えられた玩弄《おもちゃ》の女子《おなご》じゃ。古い手に摘まれた、新しい花の事いの。後妻《うわなり》じゃ、後妻《ごさい》と申しますものじゃわいのう。」
ト一度|引《ひっ》
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