めざめ》と泣く。
十四
「陰気だ陰気だ、此奴《こいつ》滅入《めい》って気が浮かん、こりゃ、汝等《わいら》出て燥《はしゃ》げやい。」
三ツ目入道、懐手の袖を刎《は》ねて、飽貝《あわびっかい》の杯を、大《でか》く弧《こ》を描いて楽屋を招く。
これの合図に、相馬内裏《そうまだいり》古御所《ふるごしょ》の管絃。笛、太鼓に鉦《かね》を合わせて、トッピキ、ひゃら、ひゃら、テケレンどん、幕を煽《あお》って、どやどやと異類異形が踊って出《い》でた。
狐が笛吹く、狸が太鼓。猫が三疋、赤手拭、すッとこ被《かぶ》り、吉原かぶり、ちょと吹流し、と気取るも交って、猫じゃ猫じゃの拍子を合わせ、トコトンと筵《むしろ》を踏むと、塵埃《ちりほこり》立交る、舞台に赤黒い渦を巻いて、吹流しが腰をしゃなりと流すと、すッとこ被りが、ひょいと刎《は》ねる、と吉原被りは、ト招ぎの手附。
狸の面、と、狐の面は、差配の禿《はげ》と、青月代《あおさかやき》の仮髪《かつら》のまま、饂飩屋の半白頭《ごましおあたま》は、どっち付かず、鼬《いたち》のような面を着て、これが鉦で。
時々、きちきちきちきちという。狐はお定
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