天麩羅《おのえてんぷら》
一………………………………大谷おそば
一………………………………市川玉子焼
一………………………………片岡 椀盛《わんもり》
一………………………………嵐 お萩
一………………………………坂東あべ川
一………………………………市村しる粉
一………………………………沢村さしみ
一………………………………中村 洋食
[#ここで字下げ終わり]
初日出揃い役者役人車輪に相勤め申候
名の上へ、藤の花を末濃《すそご》の紫。口上あと余白の処に、赤い福面女《おかめ》に、黄色な瓢箪男《ひょっとこ》、蒼《あお》い般若《はんにゃ》の可恐《こわ》い面。黒の松葺《まつたけ》、浅黄の蛤《はまぐり》、ちょっと蝶々もあしらって、霞を薄くぼかしてある。
引寄せられて慕って来た、囃子の音には、これだけ気の合ったものは無い。が、松崎は読返してみて苦笑いした。
坂東あべ川、市村しるこ、渠《かれ》はあまい名を春狐《しゅんこ》と号して、福面女に、瓢箪男、般若の面、……二十五座の座附きで駈出《かけだ》しの狂言方であったから。――
「串戯《じょうだん》じゃないぜ。」
思わず、声を出して独言《ひと
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