いなお》つて、
「都鳥もし蘇生《よみがえ》らず、白妙なきものと成らば、大島守を其のまゝに差置《さしお》かぬぞ、と確《しか》と申せ。いや/\待て、必ず誓つて人には洩《もら》すな。――拙道の手に働かせたれば、最早《もは》や汝《そち》は差許《さしゆる》す。小堀伝十郎、確《しか》とせい、伝十郎。」
「はつ。」
と武士《さむらい》は、魂とともに手を支《つ》いた。こゝに魂と云ふは、両刀の事ではない。
八
「何と御坊」
と、少時《しばらく》して山伏《やまぶし》が云つた。
「思ひ懸《が》けず、恁《かか》る処《ところ》で行逢《ゆきお》うた、互《たがい》の便宜《べんぎ》ぢや。双方、彼等《かれら》を取替《とりか》へて、御坊《ごぼう》は羽黒へ帰りついでに、其の武士《さむらい》を釣《つ》つて行く、拙道《せつどう》は一翼《ひとつばさ》、京へ伸《の》して、其の屑屋《くずや》を連れ参つて、大仏前の餅《もち》を食《く》はさうよ――御坊の厚意は無にせまい。」
「よい、よい、名案。」
「参れ。……屑屋。」
と山の襞※[#「ころもへん+責」、第3水準1−91−87]《ひだ》を霧の包むやうに枯蘆《かれ
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