》したは今時の博士《はかせ》、秦四書頭《はたししょのかみ》と言ふ親仁《おやじ》ぢや。」
「あの、親仁《おやじ》。……予《かね》て大島守《おおしまのかみ》に取入《とりい》ると聞いた。成程《なるほど》、其辺《そのへん》の催《もよお》しだな。積《つも》つても知れる。老耄《おいぼれ》儒者めが、家《うち》に引込《ひっこ》んで、溝端《どぶばた》へ、桐《きり》の苗《なえ》でも植ゑ、孫娘の嫁入道具の算段なりとして居《お》れば済むものを――いや、何時《いつ》の世にも当代におもねるものは、当代の学者だな。」
「塩辛い……」
と山伏《やまぶし》は、又したゝか水を飲んで、
「其処《そこ》でぢや……松平大島守、邸《やしき》は山ぢやが、別荘が本所大川《ほんじょおおかわ》べりにあるに依《よ》り、かた/″\大島守か都鳥を射《い》て取る事に成つた。……此の殿、聊《いささ》かものの道理を弁《わきま》へてゐながら、心得違ひな事は、諸事万端、おありがたや関東の御威光がりでな。――一年《ひととせ》、比野大納言、まだお年若《としわか》で、京都|御名代《ごみょうだい》として、日光の社参《しゃさん》に下《くだ》られたを饗応《きょう
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