》つて、水の面《おも》を舞つて来るのを、小法師《こほうし》は指の先へ宙で受けた。つはぶきの葉を喇叭《らっぱ》に巻いたは、即《すなわ》ち煙管《きせる》で。蘆《あし》の穂といはず、草と言はず※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《むし》り取つて、青磁色《せいじいろ》の長い爪に、火を翳《かざ》して、ぶく/\と吸《すい》つけた。火縄を取つて、うしろ状《ざま》の、肩越《かたごし》に、ポン、と投げると、杉の枝に挟まつて、ふつと消えたと思つたのが、めら/\と赤く燃上《もえあが》つた。ぱち/\と鳴ると、双子山颪《ふたごやまおろし》颯《さっ》として、松明《たいまつ》ばかりに燃えたのが、見る/\うちに、轟《ごう》と響いて、凡《およ》そ片輪車《かたわぐるま》の大きさに火の搦《から》んだのが、梢《こずえ》に掛《かか》つて、ぐる/\ぐる/\と廻る。
此の火に照《てら》された、二個の魔神の状《さま》を見よ。けたゝましい人声《ひとごえ》幽《かすか》に、鉄砲を肩に、猟師が二人のめりつ、反《そ》りつ、尾花《おばな》の波に漂うて森の中を遁《に》げて行く。
山兎《やまうさぎ》が二三|疋《びき》、あとを追ふやうに
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