きらめくのが、かち/\と鳴りさうなのであるから、不断の滝よりは、此の音が高く響く。
鷺《さぎ》、獺《かわうそ》、猿《ましら》の類《たぐい》が、魚《うお》を漁《あさ》るなどとは言ふまい。……時と言ひ、場所と言ひ、怪《け》しからず凄《すさま》じいことは、さながら狼《おおかみ》が出て竜宮の美女たちを追廻《おいまわ》すやうである。
が、耳も牙《きば》もない、毛坊主《けぼうず》の円頂《まるあたま》を、水へ逆《さかさま》に真俯向《まうつむ》けに成つて、麻《あさ》の法衣《ころも》のもろ膚《はだ》脱いだ両手両脇へ、ざぶ/\と水を掛ける。――恁《かか》る霜夜《しもよ》に、掻乱《かきみだ》す水は、氷の上を稲妻《いなずま》が走るかと疑はれる。
あはれ、殊勝な法師や、捨身《しゃしん》の水行《すいぎょう》を修《しゅ》すると思へば、蘆《あし》の折伏《おれふ》す枯草《かれくさ》の中に籠《かご》を一個《ひとつ》差置《さしお》いた。が、鯉《こい》を遁《にが》した畚《びく》でもなく、草を刈《か》る代《しろ》でもない。屑屋《くずや》が荷《にな》ふ大形《おおがた》な鉄砲笊《てっぽうざる》に、剰《あまつさ》へ竹のひろひ箸
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