危險《けんのん》だと思《おも》ツたら、船《ふね》なんぞに乘《の》らぬが可《い》いて。また生命《いのち》を介《かま》はずに乘《の》ツた衆《しう》なら、風《かぜ》が吹《ふ》かうが、船《ふね》が覆《かへ》らうが、那樣事《そんなこと》に頓着《とんぢやく》は無《な》い筈《はず》ぢやが、恁《か》う見渡《みわた》した處《ところ》では、誰方《どなた》も怯氣々々《びく/\》もので居《ゐ》らるゝ樣子《やうす》ぢやが、さて/\笑止千萬《せうしせんばん》な、水《みづ》に溺《おぼ》れやせぬかと、心配《しんぱい》する樣《やう》な者《もの》は、何《ど》の道《みち》はや平生《へいぜい》から、後生《ごしやう》の善《い》い人《ひと》ではあるまい。
 先《ま》づ人《ひと》に天氣《てんき》を問《と》はうより、自分《じぶん》の胸《むね》に聞《き》いて見《み》るぢやて。
(己《おのれ》は難船《なんせん》に會《あ》ふやうなものか、何《ど》うぢや。)と、其處《そこ》で胸《むね》が、(お前《まへ》は隨分《ずゐぶん》罪《つみ》を造《つく》つて居《ゐ》るから何《ど》うだか知《し》れぬ。)と恁《か》う答《こた》へられた日《ひ》にや、覺悟《か
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