き》でござらう。」と言《い》ひつゝ空《そら》を打仰《うちあふ》ぎて、
「はゝあ、是《これ》はまた結構《けつこう》なお天氣《てんき》で、日本晴《につぽんばれ》と謂《い》ふのでござる。」
此《こ》の暢氣《のんき》なる答《こたへ》を聞《き》きて、渠《かれ》は呆《あき》れながら、
「そりや、誰《だれ》だつて知《し》つてまさ、私《わつし》は唯《たゞ》急《きふ》に天氣模樣《てんきもやう》が變《かは》つて、風《かぜ》でも吹《ふ》きやしまいかと、其《それ》をお聞《き》き申《まを》すんでさあ。」
「那樣事《そんなこと》は知《し》らぬな。私《わし》は目下《いま》の空模樣《そらもやう》さへお前《まへ》さんに聞《き》かれたので、やつと氣《き》が着《つ》いたくらゐぢやもの。いや又《また》雨《あめ》が降《ふ》らうが、風《かぜ》が吹《ふ》かうが、そりや何《なに》もお天氣次第《てんきしだい》ぢや、此方《こつち》の構《かま》ふこツちや無《な》いてな。」
「飛《と》んだ事《こと》を。風《かぜ》が吹《ふ》いて耐《たま》るもんか。船《ふね》だ、もし、私等《わつしら》御同樣《ごどうやう》に船《ふね》に乘《の》つて居《ゐ》るん
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