》の遣《つか》はしたる使者《ししや》としも見《み》えたりけむ、乘客等《じようかくら》は二|人《にん》三|人《にん》、彼方《あなた》此方《こなた》に額《ひたひ》を鳩《あつ》めて呶々《どゞ》しつゝ、時々《とき/″\》法華僧《ほつけそう》を流眄《しりめ》に懸《か》けたり。
旅僧《たびそう》は冷々然《れい/\ぜん》として、聞《きこ》えよがしに風説《うはさ》して惡樣《あしざま》に罵《のゝし》る聲《こゑ》を耳《みゝ》にも入《い》れざりき。
せめては四邊《あたり》に心《こゝろ》を置《お》きて、肩身《かたみ》を狹《せま》くすくみ居《ゐ》たらば、聊《いさゝ》か恕《じよ》する方《はう》もあらむ、遠慮《ゑんりよ》もなく席《せき》を占《し》めて、落着《おちつ》き澄《すま》したるが憎《にく》しとて、乘客《じようかく》の一|人《にん》は衝《つ》と其《そ》の前《まへ》に進《すゝ》みて、
「御出家《ごしゆつけ》、今日《けふ》の御天氣《おてんき》は如何《いかゞ》でせうな。」
旅僧《たびそう》は半眼《はんがん》に閉《ふさ》ぎたる眼《め》を開《ひら》きて、
「さればさ、先刻《さつき》から降《ふ》らぬから、お天氣《てん
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