居《ゐ》られる。
 又《また》死《し》んでも極樂《ごくらく》へ確《たしか》に行《ゆ》かれる身《み》ぢやと固《かた》く信《しん》じて居《ゐ》る者《もの》は、恁《かう》云《い》ふ時《とき》には驚《おどろ》かぬ。
 まあ那樣事《そんなこと》は措《お》いて、其時《そのとき》船《ふね》の中《なか》で、些《ちつ》とも騷《さわ》がぬ、いやも頓《とん》と平氣《へいき》な人《ひと》が二人《ふたり》あつた。美《うつく》しい娘《むすめ》と可愛《かはい》らしい男《をとこ》の兒《こ》ぢや。※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、9−3]弟《きやうだい》と見《み》えてな、似《に》て居《ゐ》ました。
 最初《さいしよ》から二人《ふたり》對坐《さしむかひ》で、人交《ひとまぜ》もせぬで何《なに》か睦《むつ》まじさうに話《はなし》をして居《ゐ》たが、皆《みんな》がわい/\言《い》つて立騷《たちさわ》ぐのを見《み》ようともせず、まるで別世界《べつせかい》に居《ゐ》るといふ顏色《かほつき》での。但《たゞ》金石間近《かないはまぢか》になつた時《とき》、甲板《かんぱん》の方《はう》に何《なに》か知《し
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