心に何をかいひたる。
やうやくいましめはゆるされたれど、なほ心の狂ひたるものとしてわれをあしらひぬ。いふこと信ぜられず、すること皆《みな》人の疑《うたがい》を増すをいかにせむ。ひしと取籠《とりこ》めて庭にも出《いだ》さで日を過しぬ。血色わるくなりて痩《や》せもしつとて、姉上のきづかひたまひ、後見《うしろみ》の叔父夫婦にはいとせめて秘《かく》しつつ、そとゆふぐれを忍びて、おもての景色見せたまひしに、門辺《かどべ》にありたる多くの児《こ》ども我が姿を見ると、一斉《いつせい》に、アレさらはれものの、気狂《きちがい》の、狐つきを見よやといふいふ、砂利《じやり》、小砂利《こじやり》をつかみて投げつくるは不断《ふだん》親しかりし朋達《ともだち》なり。
姉上は袖《そで》もてわれを庇《かば》ひながら顔を赤うして遁《に》げ入りたまひつ。人目なき処《ところ》にわれを引据《ひきす》ゑつと見るまに取つて伏《ふ》せて、打ちたまひぬ。
悲しくなりて泣出《なきだ》せしに、あわただしく背《せな》をばさすりて、
「堪忍《かんにん》しておくれよ、よ、こんなかはいさうなものを。」
といひかけて、
「私《わたし》あも
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