じむ》きざま、わがかほをば見つ。
「気分は癒《なお》つたかい、坊や。」
といひて頭《こうべ》を傾けぬ。ちかまさりせる面《おもて》けだかく、眉あざやかに、瞳《ひとみ》すずしく、鼻やや高く、唇の紅《くれない》なる、額《ひたい》つき頬のあたり※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]《ろう》たけたり。こは予《かね》てわがよしと思ひ詰《つめ》たる雛《ひな》のおもかげによく似たれば貴《とうと》き人ぞと見き。年は姉上よりたけたまへり。知人《しりびと》にはあらざれど、はじめて逢ひし方《かた》とは思はず、さりや、誰《たれ》にかあるらむとつくづくみまもりぬ。
またほほゑみたまひて、
「お前あれは斑猫《はんみよう》といつて大変な毒虫なの。もう可《い》いね、まるでかはつたやうにうつくしくなつた、あれでは姉様《ねえさん》が見違へるのも無理はないのだもの。」
われもさあらむと思はざりしにもあらざりき。いまはたしかにそれよと疑はずなりて、のたまふままに頷《うなず》きつ。あたりのめづらしければ起きむとする夜着《よぎ》の肩、ながく柔《やわら》かにおさへたまへり。
「ぢつとしておいで、あんばいが
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