下さいましな。」
「そりゃ、いうまでもありません。」
「そしてまあ、どんな処《ところ》にございましたえ。」
「それこそ夢のようだと、いうのだろうと思います。路《みち》すがら、そうやって、影のような障礙《しょうがい》に出遇って、今にも娘が血に染まって、私は取って殺さりょうと、幾度《いくたび》思ったか解《わか》りませんが、黄昏《たそがれ》と思う時、その美女ヶ原というのでしょう。凡《およそ》八|町《ちょう》四方ばかりの間、扇の地紙《じがみ》のような形に、空にも下にも充満《いっぱい》の花です。
そのまま二人で跪《ひざまず》いて、娘がするように手を合せておりました。月が出ると、余り容易《たやす》い。つい目の前の芍薬《しゃくやく》の花の中に花片《はなびら》の形が変って、真紅《まっか》なのが唯《ただ》一輪。
採って前髪《まえがみ》に押頂《おしいただ》いた時、私の頭《つむり》を撫《な》でながら、余《あまり》の嬉《うれ》しさ、娘ははらはらと落涙《らくるい》して、もう死ぬまで、この心を忘れてはなりませんと、私の頭《つむり》に挿《さ》させようとしましたけれども、髪は結んでないのですから、そこで娘が、自分
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