子《しゅす》の帯をしめて、鎌を一挺、手拭《てぬぐい》にくるんでいたです。その間《あいだ》に、白媼《しろうば》の内《うち》を、私を膝に抱いて出た時は、髷《まげ》を唐輪《からわ》のように結《ゆ》って、胸には玉を飾って、丁《ちょう》ど天女《てんにょ》のような扮装《いでたち》をして、車を牛に曳かせたのに乗って、わいわいという群集《ぐんじゅ》の中を、通ったですが、村の者が交《かわ》る交《がわ》る高く傘を※[#「敬/手」、第3水準1−84−92]掛《さしか》けて練《ね》ったですね。
村端《むらはずれ》で、寺に休むと、此処《ここ》で支度《したく》を替えて、多勢《おおぜい》が口々《くちぐち》に、御苦労、御苦労というのを聞棄《ききず》てに、娘は、一人の若い者に負《おんぶ》させた私にちょっと頬摺《ほおずり》をして、それから、石高路《いしだかみち》の坂を越して、賑《にぎや》かに二階屋《にかいや》の揃った中の、一番|屋《や》の棟《むね》の高い家へ入ったですが、私は唯《ただ》幽《かすか》に呻吟《うめ》いていたばかり。尤《もっと》も白姥《しろうば》の家に三晩《みばん》寝ました。その内も、娘は外へ出ては帰って来て
前へ
次へ
全59ページ中40ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング