いやく》の廣告《くわうこく》だ、そんなものに、見愡《みと》れるな。おつと、また其《その》古道具屋《ふるだうぐや》は高《たか》さうだぜ、お辭儀《じぎ》をされると六《むづ》ヶしいぞ。いや、何《なに》か申《まを》す内《うち》に、ハヤこれは笹《さゝ》の雪《ゆき》に着《つ》いて候《さふらふ》が、三時《さんじ》すぎにて店《みせ》はしまひ、交番《かうばん》の角《かど》について曲《まが》る。この流《ながれ》に人《ひと》集《つど》ひ葱《ねぎ》を洗《あら》へり。葱《ねぎ》の香《か》の小川《をがは》に流《なが》れ、とばかりにて句《く》にはならざりしが、あゝ、もうちつとで思《おも》ふこといはぬは腹《はら》ふくるゝ業《わざ》よといへば、いま一足《ひとあし》早《はや》かりせば、笹《さゝ》の雪《ゆき》が賣切《うりきれ》にて腹《はら》ふくれぬ事《こと》よといふ。さあ、じぶくらずに、歩行《ある》いた/\。
一寸《ちよつと》伺《うかゞ》ひます。此路《このみち》を眞直《まつすぐ》に參《まゐ》りますと、左樣《さやう》三河島《みかはしま》と、路《みち》を行《ゆ》く人《ひと》に教《をし》へられて、おや/\と、引返《ひきかへ》し
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