森《もり》の下《した》の徑《こみち》を行《ゆ》けば、土《つち》濡《ぬ》れ、落葉《おちば》濕《しめ》れり。白張《しらはり》の提灯《ちやうちん》に、薄《うす》き日影《ひかげ》さすも物淋《ものさび》し。苔《こけ》蒸《む》し、樒《しきみ》枯《か》れたる墓《はか》に、門《もん》のみいかめしきもはかなしや。印《しるし》の石《いし》も青《あを》きあり、白《しろ》きあり、質《しつ》滑《なめらか》にして斑《ふ》のあるあり。あるが中《なか》に神婢《しんぴ》と書《か》いたるなにがしの女《ぢよ》が耶蘇教徒《やそけうと》の十字形《じふじがた》の塚《つか》は、法《のり》の路《みち》に迷《まよ》ひやせむ、異國《いこく》の人《ひと》の、友《とも》なきかと哀《あはれ》深《ふか》し。
竹《たけ》の埒《らち》結《ゆ》ひたる中《なか》に、三四人《さんよにん》土《つち》をほり居《ゐ》るあたりにて、路《みち》も分《わか》らずなりしが、洋服《やうふく》着《き》たる坊《ばう》ちやん二人《ふたり》、學校《がくかう》の戻《もどり》と見《み》ゆるがつか/\と通《とほ》るに頼母《たのも》しくなりて、後《あと》をつけ、やがて木《こ》の間《
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