そぎあし》になつて來《く》る。言問《こととひ》の曲角《まがりかど》で、天道《てんだう》是《ぜ》か非《ひ》か、又《また》一組《ひとくみ》、之《これ》は又《また》念入《ねんいり》な、旦那樣《だんなさま》は洋服《やうふく》の高帽子《たかばうし》で、而《そ》して若樣《わかさま》をお抱《だ》き遊《あそ》ばし、奧樣《おくさま》は深張《ふかばり》の蝙蝠傘《かうもりがさ》澄《すま》して押並《おしなら》ぶ後《あと》から、はれやれお乳《ち》の人《ひと》がついて手《て》ぶらなり。えゝ! 日本《につぽん》といふ國《くに》は、男《をとこ》が子《こ》を抱《だ》いて歩行《ある》く處《ところ》か、もう叶《かな》はぬこりやならぬ。殺《ころ》さば殺《ころ》せ、とべツたり尻餅《しりもち》。
 旦那《だんな》お相乘《あひのり》參《まゐ》りませう、と折《をり》よく來懸《きかゝ》つた二人乘《ににんのり》に這《は》ふやうにして二人《ふたり》乘込《のりこ》み、淺草《あさくさ》まで急《いそ》いでくんな。安《やす》い料理屋《れうりや》で縁起《えんぎ》直《なほ》しに一杯《いつぱい》飮《の》む。此處《こゝ》で電燈《でんとう》がついて夕飯《ゆ
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