ふめし》を認《したゝ》め、やゝ人心地《ひとごこち》になる。小庭《こには》を隔《へだ》てた奧座敷《おくざしき》で男女《なんによ》打交《うちまじ》りのひそ/\話《ばなし》、本所《ほんじよ》も、あの餘《あんま》り奧《おく》の方《はう》ぢやあ私《わたし》厭《いや》アよ、と若《わか》い聲《こゑ》の媚《なま》めかしさ。旦那《だんな》業平橋《なりひらばし》の邊《あたり》が可《よ》うございますよ。おほゝ、と老《ふ》けた聲《こゑ》の恐《おそろ》しさ。圍者《かこひもの》の相談《さうだん》とおぼしけれど、懲《こ》りて詮議《せんぎ》に及《およ》ばず。まだ此方《こつち》が助《たすか》りさうだと一笑《いつせう》しつゝ歸途《きと》に就《つ》く。噫《あゝ》此行《このかう》、氷川《ひかは》の宮《みや》を拜《はい》するより、谷中《やなか》を過《す》ぎ、根岸《ねぎし》を歩行《ある》き、土手《どて》より今戸《いまど》に出《い》で、向島《むかうじま》に至《いた》り、淺草《あさくさ》を經《へ》て歸《かへ》る。半日《はんにち》の散策《さんさく》、神祇《しんぎ》あり、釋教《しやくけう》あり、戀《こひ》あり、無常《むじやう》あり、景《
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