「りう」に傍点]たる着附《きつけ》、金時計《きんどけい》をさげて、片手《かたて》に裳《もすそ》をつまみ上《あ》げ、さすがに茶澁《ちやしぶ》の出《で》た脛《はぎ》に、淺葱《あさぎ》縮緬《ちりめん》を搦《から》ませながら、片手《かたて》に銀《ぎん》の鎖《くさり》を握《にぎ》り、これに渦毛《うづけ》の斑《ぶち》の艷々《つや/\》しき狆《ちん》を繋《つな》いで、ぐい/\と手綱《たづな》のやうに捌《さば》いて來《き》しが、太《ふと》い聲《こゑ》して、何《ど》うぢや未《ま》だ歩行《ある》くか、と言《い》ふ/\人《ひと》も無《な》げにさつさつと縱横《じうわう》に濶歩《くわつぽ》する。人《ひと》に負《おぶ》はして連《つ》れた親仁《おやぢ》は、腰《こし》の拔《ぬ》けたる夫《をつと》なるべし。驚破《すは》秋草《あきぐさ》に、あやかしのついて候《さふらふ》ぞ、と身構《みがまへ》したるほどこそあれ、安下宿《やすげしゆく》の娘《むすめ》と書生《しよせい》として、出來合《できあひ》らしき夫婦《ふうふ》の來《きた》りしが、當歳《たうさい》ばかりの嬰兒《あかんぼ》を、男《をとこ》が、小手《こて》のやうに白《しろ》シヤ
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