はぎ》に隱《かく》れ、刈萱《かるかや》に搦《から》み、葛《くず》に絡《まと》ひ、芙蓉《ふよう》にそよぎ、靡《なび》き亂《みだ》れ、花《はな》を出《い》づる人《ひと》、花《はな》に入《い》る人《ひと》、花《はな》をめぐる人《ひと》、皆《みな》此花《このはな》より生《うま》れ出《い》でて、立去《たちさ》りあへず、舞《ま》ひありく、人《ひと》の蝶《てふ》とも謂《い》ひつべう。
などと落雁《らくがん》を噛《かじ》つて居《ゐ》る。處《ところ》へ! 供《とも》を二人《ふたり》つれて、車夫體《しやふてい》の壯佼《わかもの》にでつぷりと肥《こ》えた親仁《おやぢ》の、唇《くちびる》がべろ/\として無花果《いちじゆく》の裂《さ》けたる如《ごと》き、眦《めじり》の下《さが》れる、頬《ほゝ》の肉《にく》掴《つか》むほどあるのを負《お》はして、六十《ろくじふ》有餘《いうよ》の媼《おうな》、身《み》の丈《たけ》拔群《ばつくん》にして、眼《まなこ》鋭《するど》く鼻《はな》の上《うへ》の皺《しわ》に惡相《あくさう》を刻《きざ》み齒《は》の揃《そろ》へる水々《みづ/\》しきが、小紋《こもん》縮緬《ちりめん》のりう[#
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