まへだれ》がけの半纏着《はんてんぎ》、跣足《はだし》に駒下駄《こまげた》を穿《は》かむとして、階下《かいか》につい居《ゐ》る下足番《げそくばん》の親仁《おやぢ》の伸《のび》をする手《て》に、一寸《ちよつと》握《にぎ》らせ行《ゆ》く。親仁《おやぢ》は高々《たか/″\》と押戴《おしいたゞ》き、毎度《まいど》何《ど》うも、といふ。境内《けいだい》の敷石《しきいし》の上《うへ》を行《ゆ》きつ戻《もど》りつ、別《べつ》にお百度《ひやくど》を踏《ふ》み居《ゐ》るは男女《なんによ》二人《ふたり》なり。女《をんな》は年紀《とし》四十ばかり。黒縮緬《くろちりめん》の一《ひと》ツ紋《もん》の羽織《はおり》を着《き》て足袋《たび》跣足《はだし》、男《をとこ》は盲縞《めくらじま》の腹掛《はらがけ》、股引《もゝひき》、彩《いろどり》ある七福神《しちふくじん》の模樣《もやう》を織《お》りたる丈長《たけなが》き刺子《さしこ》を着《き》たり。これは素跣足《すはだし》、入交《いりちが》ひになり、引違《ひきちが》ひ、立交《たちかは》りて二人《ふたり》とも傍目《わきめ》も觸《ふ》らず。おい邪魔《じやま》になると惡《わる》い
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