やうぐわんじ》の門《もん》の外《そと》までも出《で》て、通《とほり》の前後《ぜんご》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまは》した。人通《ひとどほ》りも、もうなくなる。……釣《つり》には行《い》つても、めつたにあけた事《こと》のない男《をとこ》だから、餘計《よけい》に氣《き》に懸《か》けて歸《かへ》りを待《ま》つのに。――小兒《こども》たちが、また惡《わる》く暖《あたゝか》いので寢苦《ねぐる》しいか、變《へん》に二人《ふたり》とも寢《ね》そびれて、踏脱《ふみぬ》ぐ、泣《な》き出《だ》す、着《き》せかける、賺《すか》す。で、女房《にようばう》は一夜《いちや》まんじりともせず、烏《からす》の聲《こゑ》を聞《き》いたさうである。
然《さ》まで案《あん》ずる事《こと》はあるまい。交際《つきあひ》のありがちな稼業《かげふ》の事《こと》、途中《とちう》で友《とも》だちに誘《さそ》はれて、新宿《しんじゆく》あたりへぐれたのだ、と然《さ》う思《おも》へば濟《す》むのであるから。
言《い》ふまでもなく、宵《よひ》のうちは、いつもの釣《つり》だと察《さつ》して居《ゐ》た。内《うち》から棹《
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