子で、近頃はただ一攫千金《いっかくせんきん》の投機を狙《ねら》っています。一人は、今は小使を志願しても間に合わない、慢性の政治狂と、三個《さんにん》を、紳士、旦那、博士に仕立てて、さくら、というものに使って、鴨を剥《はい》いで、骨までたたこうという企謀《たくらみ》です。
 前々から、ちゃら金が、ちょいちょい来ては、昼間の廻燈籠《まわりどうろう》のように、二階だの、濡縁《ぬれえん》だの、薄羽織と、兀頭《はげあたま》をちらちらさして、ひそひそと相談をしていましたっけ。
 当日は、小僧に一包み衣類を背負《しょ》わして――損料です。黒絽《くろろ》の五つ紋に、おなじく鉄無地のべんべらもの、くたぶれた帯などですが、足袋まで身なりが出来ました。そうは資本《もとで》が続かないからと、政治家は、セルの着流しです。そのかわり、この方は山高帽子で――おやおや忘れた――鉄無地の旦那に被《かぶ》せる帽子を。……そこで、小僧のを脱がせて、鳥打帽です。
 ――覚えていますが、その時、ちゃら金が、ご新姐に、手づくりのお惣菜、麁末《そまつ》なもの、と重詰の豆府滓《とうふがら》、……卯《う》の花を煎《い》ったのに、繊《せ
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