ふたゝ》び是《これ》を阿母《おふくろ》の胎内《たいない》に戻《もど》すことこそ叶《かな》はずとも、などか其《そ》の術《すべ》のなからんや、いで立處《たちどころ》に驗《しるし》を見《み》せう。鶴《つる》よ、來《こ》いよ、と呼《よ》びたまへば、折《をり》から天下太平《てんかたいへい》の、蒼空《あをぞら》高《たか》く伸《の》したりける、丹頂千歳《たんちやうせんざい》の鶴《つる》一羽《いちは》、ふは/\と舞《ま》ひ下《お》りて、雪《ゆき》に末黒《すゑぐろ》の大紋《だいもん》の袖《そで》を絞《しぼ》つて畏《かしこま》る。殿《との》、御覽《ごらう》じ、早速《さつそく》の伺候《しこう》過分々々《くわぶん/\》と御召《おめ》しの御用《ごよう》が御用《ごよう》だけ、一寸《ちよつと》お世辭《せじ》を下《くだ》し置《お》かれ、扨《さ》てしか/″\の仔細《しさい》なり。萬事《ばんじ》其《そ》の方《はう》に相《あひ》まかせる、此女《このもの》何處《いづこ》にても伴《ともな》ひ行《ゆ》き、妙齡《としごろ》を我《わ》が手《て》に入《い》れんまで、人目《ひとめ》にかけず藏《かく》し置《お》け。日月《ひつき》にはともあ
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