ましますべし。然《さ》りながら、我《わ》が君主《との》、無禮《なめ》なる儀《ぎ》には候《さふら》へども、此《こ》の姫《ひめ》、殿《との》の夫人《ふじん》とならせたまふ前《まへ》に、餘所《よそ》の夫《をつと》の候《さふらふ》ぞや。何《なん》と、と殿樣《とのさま》、片膝《かたひざ》屹《きつ》と立《た》てたまへば、唯唯《はは》、唯《は》、恐《おそ》れながら、打槌《うつつち》はづれ候《さふらふ》ても、天眼鏡《てんがんきやう》は淨玻璃《じやうはり》なり、此《こ》の女《ぢよ》、夫《をつと》ありて、後《のち》ならでは、殿《との》の御手《おんて》に入《い》り難《がた》し、と憚《はゞか》らずこそ申《まを》しけれ。
 殿《との》よツく聞《きこ》し召《め》し、呵々《から/\》と笑《わら》はせ給《たま》ひ、余《よ》を誰《たれ》ぢやと心得《こゝろえ》る。コリヤ道人《だうじん》、爾《なんぢ》が天眼鏡《てんがんきやう》は違《たが》はずとも、草木《くさき》を靡《なび》かす我《われ》なるぞよ。金《かね》の力《ちから》と權威《けんゐ》を以《もつ》て、見事《みごと》に此《こ》の女《もの》祕藏《ひざう》し見《み》すべし、再《
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