らん、夜分《やぶん》な星《ほし》にも覗《のぞ》かすな、心得《こゝろえ》たか、とのたまへば、赤《あか》い頭巾《づきん》を着《き》た親仁《おやぢ》、嘴《くちばし》を以《も》て床《ゆか》を叩《たゝ》き、項《うなじ》を垂《た》れて承《うけたまは》り、殿《との》の膝《ひざ》におはします、三歳《さんさい》の君《きみ》をふうはりと、白《しろ》き翼《つばさ》に掻《か》い抱《いだ》き、脚《あし》を縮《ちゞ》めて御庭《おんには》の松《まつ》の梢《こずゑ》を離《はな》れ行《ゆ》く。
恁《かく》て可凄《すさまじ》くも又《また》可恐《おそろし》き、大薩摩《おほさつま》ヶ|嶽《たけ》の半《なか》ばに雲《くも》を貫《つらぬ》く、大木《たいぼく》の樹《みき》の高《たか》き枝《えだ》に綾錦《あやにしき》の巣《す》を營《いとな》み、こゝに女《むすめ》を据《す》ゑ置《お》きしが、固《もと》より其《そ》の處《ところ》を選《えら》びたれば、梢《こずゑ》は猿《ましら》も傳《つた》ふべからず、下《した》は矢《や》を射《い》る谷川《たにがは》なり。富士河《ふじがは》の船《ふね》も寄《よ》せ難《がた》し。はぐくみ參《まゐ》らす三度《
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