とるよ。第一の姉が医学士さね、直《じき》の妹の縁附いているのが、理学士。その次のが工学士。皆《みんな》食いはぐれはないさ。……今また話しのある四番目のも医学士さ、」
「妙に選取《えりど》って揃えたもんだな。」
「うむ、それは父様の主義で、兄弟|一家《いっけ》一門を揃えて、天下に一階級を形造ろうというんだ。なるべくは、銘々それぞれの収入も、一番の姉が三百円なら、次が二百五十円、次が二百円、次が百五十円、末が百円といった工合に長幼の等差を整然《きちん》と附けたいというわけだ。
先ず行われている、今の処じゃ。そうしてその子、その孫、と次第にこの社会における地位を向上しようというのが理想なんです。例えば、今の代《よ》が学士なら、その次が博士さ、大博士さね。君。
謂って見れば、貴族院も、一家族で一党を立てることが出来る。内閣も一門で組織し得るようにという遠大の理想があるんだ。また幸に、父様にゃ孫も八九人出来た。姪《めい》を引取って教育しているのも三四人ある。着々として歩を進めている。何でも妹たちが人才を引着けるんだ。」
人事《ひとごと》ながら、主税は白面に紅《こう》を潮して、
「じゃ、君
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