ら、ついね、」
と気の毒そう。
「まあ、可い、そんな事は構わないが、僕と懇意にしてくれるんなら、もうちっと君、遊蕩《あそび》を控えて貰いたいね。
昨日《きのう》も君の母様が来て、つくづく若様の不始末を愚痴るのが、何だか僕が取巻きでもして、わッと浮かせるようじゃないか。
高利《アイス》を世話して、口銭を取る。酒を飲ませてお流《ながれ》頂戴。切々《せつせつ》内へ呼び出しちゃ、花骨牌《はなふだ》でも撒《ま》きそうに思ってるんだ。何の事はない、美少年録のソレ何だっけ、安保箭五郎直行《あほのやごろうなおゆき》さ。甚しきは美人局《つつもたせ》でも遣りかねないほど軽蔑《けいべつ》していら。母様の口ぶりが、」
とややその調子が強くなったが、急に事も無げな串戯口《じょうだんぐち》、
「ええ、隊長、ちと謹んでくれないか。」
「母様の来ている内は謹慎さ。」
と灰を掻きまわして、
「その代り、西洋料理七皿だ。」と火箸をバタリ。
十五
「じゃあ色気より食気の方だ、何だか自棄《やけ》に食うようじゃないか。しかし、まあそれで済みゃ結構さ。」
「済みやしないよ、七皿のあとが、一銚子《ひとち
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