ょうし》、玉子に海苔《のり》と来て、おひけ[#「おひけ」に傍点]となると可いんだけれど、やっぱり一人で寝るんだから、大きに足が突張《つっぱ》るです。それに母様が来たから、ちっとは小遣があるし、二三時間駈出して行って来ようかと思う。どうだろう、君、迷惑をするだろうか。」
 と甘えるような身体《からだ》つき、座蒲団にぐったりして、横合から覗《のぞ》いて云う。
「何が迷惑さ。君の身体で、御自分お出かけなさるに、ちっとも迷惑な事はない。迷惑な事はないが……」
「いや、ところが今夜は、君の内へ来たことを、母様が知ってるからね。今のような話じゃ、また君が引張出したように、母様に思われようかと、心配をするだろうと云うんだ。」
「お疑いなさるは御勝手さ。癪《しゃく》に障ればったって、恐い事、何あるものか、君の母親《おふくろ》が何だ?」
 と云いかけて、語気をかえ、
「そう云っちまえば、実も蓋《ふた》もない。痛くない腹を探られるのは、僕だって厭《いや》だ。それにしても早瀬へ遊びに行くと云う君に、よく故障を入れなかったね。」
「うむ、そりゃあれです、君に逢わない内は疑《うたぐ》っていないでもなかったがね、
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