く行くものか。
 見たが可い、こう、己《おれ》が腕がちょいと触ると、学校や、道学者が、新粉《しんこ》細工で拵《こしら》えた、貞女も賢母も良妻も、ばたばたと将棊倒しだ。」
 英臣の目は血走った。

       五十五

「河野の家には限らねえ。およそ世の中に、家の為に、女の児《こ》を親勝手に縁附けるほど惨《むご》たらしい事はねえ。お為ごかしに理窟を言って、動きの取れないように説得すりゃ、十六や七の何にも知らない、無垢《むく》な女《むすめ》が、頭《かぶり》一ツ掉《ふ》り得るものか。羞含《はにか》んで、ぼうとなって、俯向《うつむ》くので話が極《きま》って、赫《かっ》と逆上《のぼ》せた奴を車に乗せて、回生剤《きつけ》のような酒をのませる、こいつを三々九度と云うのよ。そこで寝て起《おき》りゃ人の女房だ。
 うっかり他《ひと》と口でも利きゃ、直ぐに何のかのと言われよう。それで二人が繋《つなが》って、光った態《なり》でもして歩行《ある》けば、親達は緋縅《ひおどし》の鎧《よろい》でも着たように汝《うぬ》が肩身をひけらかすんだね。
 娘が惚れた男に添わせりゃ、たとい味噌漉《みそこし》を提げたって、玉の
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