ったぜ、犬畜生だけ、情《なさけ》には脆《もろ》いのよ。
 法学士が、(さあ、使賃だ、祝儀だ、)と一円出して、(酒が飲めなきゃ飯を食ってもう帰れ、御苦労だった、今度ッからもっと上手に攫《や》れよ。)と言われて、畳に喰《くい》ついて泣いていると、(親がないんだわねえ、)と、勿体ねえ、奥方の声がうるんだと思いねえ。(晩の飯を内で食って、翌日《あす》の飯をまた内で食わないか、酒井の籠で飼ってやろう、隼。)と、それから親鳥の声を真似《まね》て、今でも囀《さえず》る独逸語だ。
 世の中にゃ河野さん、こんな猿を養って、育ててくれる人も有るのに、お前さん方は、まあ何という、べらぼうな料簡方《りょうけんかた》だい。
 可愛い娘たちを玉に使って、月給高で、婿を選んで、一家《いっけ》の繁昌《はんじょう》とは何事だろう。
 たまたま人間に生を受けて、しかも別嬪《べっぴん》に生れたものを、一生にたった一度、生命《いのち》とはつりがえの、色も恋も知らせねえで、盲鳥《めくらどり》を占めるように野郎の懐へ捻込《ねじこ》んで、いや、貞女になれ、賢母になれ、良妻になれ、と云ったって、手品の種を通わせやしめえし、そう、うま
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