じゃ同一所《おんなじとこ》の税関長、稲坂と云う法学士で、大鵬《たいほう》のような人物、ついて居た三人は下役だね。
後で聞きゃ、ある時も、結婚したての細君を連れて、芳原を冷かして、格子で馴染《なじみ》の女に逢って、
(一所に登楼《あが》るぜ。)と手を引いて飛込んで、今夜は情女《いろおんな》と遊ぶんだから、お前は次の室《ま》で待ってるんだ、と名代《みょうだい》へ追いやって、遊女《おいらん》と寝たと云う豪傑さね。
それッきり、細君も妬《や》かないが、旦那も嫉気《じんすけ》少しもなし。
いつか三月ばかり台湾を留守にして、若いその細君と女中と書生を残して置くと、どこの婦《おんな》も同一《おんなじ》だ。前《ぜん》から居る下役の媽々《かかあ》ども、いずれ夫人とか、何子とか云う奴等が、女同士、長官の細君の、年紀《とし》の若いのを猜《そね》んだやつさ。下女に鼻薬を飼って讒言《つげぐち》をさせたんだね。その法学士が内へ帰ると、(お帰んなさいまし、さて奥様はひょんな事。)と、書生と情交《わけ》があるように言いつける。とよくも聞かないで、――(出て行《ゆ》け。)――と怒鳴り附けた。
誰に云ったと思いま
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