。」


     隼

       五十三

 一言亡状《いちげんぼうじょう》を極めたにも係わらず、英臣はかえって物静《ものしずか》に聞いた。
「なぜか。」
「馬丁《べっとう》貞造と不埒《ふらち》して、お道さんを産んだからです。」
 強いて言《ことば》を落着けて、
「それから、」
「第二、お道さんを私に下さい。」
「何でじゃ?」
「私と、いい中です。」
「むむ、」
 と口の内で言った。
「それから、」
「第三、お菅さんを、島山から引取っておしまいなさい。」
「なぜな。」
「私と約束しました。」
「誰と?」
 はたと目を怒らすと、早瀬は澄まして、
「私とさ。」
「うむ、それから?」
「第四、病院をお潰《つぶ》しなさい。」
「なぜかい。」
「医学士が毒を装《も》ります。」
「まだ有った、のう。」と、落着いて尋ねた。
「河野家の家庭は、かくのごとく汚《けが》れ果てた。……最早や、忰《せがれ》の嫁を娶《と》るのに、他《ひと》の大切な娘の、身分系図などを検《しら》べるような、不埒な事はいたしますまい。また一門の繁栄を計るために、娘どもを餌にして、婿を釣りますまい。
 就中《なかんずく》、独逸
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