かし》い声をかけて、看護婦の傍《かたわら》をすっと抜けて真直《まっすぐ》に入ったが、
「もう快《よ》くって?」
と胸を斜めに、帯にさし込んだ塗骨の扇子《おうぎ》も共に、差覗《さしのぞ》くようにした。
「お嬢さん……」とまだ※[#「りっしんべん+夢」の「夕」に代えて「目」、第4水準2−12−81]《ぼう》としている。
「しばらくね。」
と前《さき》へ言われて、はじめて吃驚《びっくり》した顔をして、
「先生は?」
「宜しくッて、母さんも。」と、ちゃんと云う。
五十
寝台《ねだい》と椅子との狭い間、目前《めさき》にその燃ゆるような帯が輝いているので、辷《すべ》り下りようとする、それもならず。蒼空《あおぞら》の星を仰ぐがごとく、お妙の顔を見上げながら、
「どうして来たんです。誰と。貴女《あなた》。いつ。どの汽車で。」と、一呼吸《ひといき》に慌《あわただ》しい。
「今日の正午《おひる》の汽車で、今来たわ。惣助ッて肴屋《さかなや》さんが一所なの。」
「ええ、め[#「め」に傍点]組がお供で。どうしてあれを御存じですね。」
「お蔦さんの事よ、」
と言いかける、口の莟《つぼみ》
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