、直ぐに開けて出ようとする。戸の外へ、何か来て立っていて、それがために重いような気がして、思わず猶予《ためら》って[#「猶予って」は底本では「猶了って」]、暗い中に、昼間|被《き》かえた自分の浴衣の白いのを、視《なが》めて悚然《ぞっ》として咳《せき》をしたが、口の裡《うち》で音には出ぬ。
「早瀬さん。」
「お蔦か、」
と言った自分の声に、聞えた声よりも驚かされて、耳を傾けるや否や、赫《かっ》となって我を忘れて、しゃにむに引開けようとした戸が、少しきしんで、ヒヤリと氷のような冷いものを手に掴んで、そのまま引開けると、裏階子が大《おおき》な穴のように真黒《まっくろ》なばかりで、別に何にも無い。
瓦を噛《か》むように棟近く、夜鴉《よがらす》が、かあ、と鳴いた。
鳴きながら、伝うて飛ぶのを、※[#「りっしんべん+夢」の「夕」に代えて「目」、第4水準2−12−81]《ぼう》として仰ぎながら、導かれるようにふらふらと出ると、声の止む時、壇階子の横を廊下に出ていた。
と見ると打向い遥か斜めなる、渠《かれ》が病室の、半開きにして来た扉《と》の前に、ちらりと見えた婦《おんな》の姿。――出たのか、
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