入ったのか、直ぐに消えた。
ぱたぱたと、我ながら慌《あわただ》しく跫音《あしおと》立てて、一文字に駈けつけたが、室へ入口で、思わず釘附にされたようになった。
バサリと音して、一握《ひとにぎり》の綿が舞うように、むくむくと渦《うずま》くばかり、枕許の棚をほとんど転《ころが》って飛ぶのは、大きな、色の白い蛾《ひとりむし》で。
枕をかけて陰々とした、燈《ともしび》の間に、あたかも鞠《まり》のような影がさした。棚には、菅子が活けて置いた、浅黄の天鵝絨《びろうど》に似た西洋花の大輪《おおりん》があったが、それではなしに――筋一ツ、元来の薬|嫌《ぎらい》が、快いにつけて飲忘れた、一度ぶり残った呑かけの――水薬《すいやく》の瓶に、ばさばさと当るのを、熟《じっ》と瞻《みつ》めて立つと、トントントンと壇を下りるような跫音がしたので、どこか、と見当も分らず振向いたのが表階子の方であった。その正面の壁に、一番|明《あかる》かった燈《ひ》が、アワヤ消えそうになっている。
その時、蛾《ひとりむし》に向うごとく、衝《つ》と踏込む途端に、
「私ですよう引[#「引」は小書き]」と床に沈んで、足許の天井裏に、電
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